助けてくれませんか?
職場に40代半ばの新人が入ってきた。
この新入りは元警察官から現金輸送車警備員を経たという前歴からして素性が胡散臭いが、口は横綱級の臭さである。
不愉快だ。
例えるなら、ウンコが流されていない公衆便所のようである。
交代勤務なので、研修中は24時間、共に行動することになる。
これは苦痛ですよ。
公衆便所で一日を暮らせますか?
お喋りが好きなようで、喋る度に臭いが漂ってくる。
極力喋らせないように持っていくためには、被害者側としては必然的に無口になり、質問に対しては愛想のない返事に終始する。
というか喋らなくとも、3m離れていても臭ってくる。
歩行した後には、臭いが道筋を残していく。
これが本当の口臭街道か?
お前がボクの前を通る都度、関税を徴収してやろうか!
因みに、その日だけの被害じゃないことは他の同僚から確認済みである。
研修中さえ我慢すれば口臭便所野郎ともおさらばできるが、お客様が不快感を覚える。
「タバコの臭いが気に食わない」「椅子の位置がズレている」というだけでクレームを送り付けてくるこのご時勢。
口が口臭便所みたいに臭いというクレームだって送られてこないとは断言できない。
ボクが客なら絶対に言うしね。
口臭がキツイのは病気の可能性だってある。
なら、尚更伝えてあげないといけない。
かといって直接新入りに
「お前の口、臭いねん!」なんて、職場のチームワークを攪乱したくないし、そもそも小心者なので言えない。
そこで、何気なしに「お前の口臭いで」ということを伝える方法はないかと頭を捻ってみた。
街のホットステーション「ローソン」で晩飯を調達しようとしたが、納入前なのか、陳列棚はスカスカ。
唯一陳列されていたペペロンチーノはニンニク三昧なので、晩飯には適さない。
これは使える。
店を出た後、
ボク…「ロクに商品が揃ってなかったですね。ペペロンチーノなんて食ったら口が臭くなるからダメですしねえ。」
口元を斜めに上げながら新入りの顔を覗き込んだが、別段、変化は窺えなかった。
これは間接的すぎたか。
昼食後、歯を磨く。
ところが新入りは磨かない。
これは使える。
ボク…「歯、磨かないんですか?」
新入り…「今日は泊まりじゃないんで歯ブラシセットを持ってきてないんですよ。」
ボク…「絶対、磨かなダメですよ。口臭いって言われますよ。」
「解りました。」
新入りはロボットと見紛うぐらいの無表情で頷いた。
ホンマに解っとんのかいな?
お前の口はウンコみたいな臭いなんだぞ!
誰か、口臭がヤバイ当該者を傷付けずに上手く伝える方法の講習を開いてくれ。
なんて陰口を叩いていたら、一番厄介で忙しい管轄へ異動を命ぜられた。
転職したいから、誰か仕事を紹介してくれませんか?