勝手
我が家に危機が訪れている。
早朝と夕方の二度、愛犬
ラヴを散歩に連れていく担当は、両親のどちらかだ。
ある早朝。
散歩から帰ってきた母は、犬小屋の傍の餌を入れている器の位置に若干の違和感を抱いた。
定位置から少しズレている。
風か何かでズレたのかと、その日は定位置に戻して済ませた。
明くる日の早朝。
散歩から帰ってきた母は、餌の量にかなりの違和感を抱いた。
散歩に連れていく前より明らかに減っている。
何者かが侵入して食い漁っているのか?
でも、証拠も何もないのでその日は注ぎ足して済ませた。
明くる日の早朝。
親父が散歩に連れていくことになった。
母はこの日こそは世にも奇妙な怪奇現象の謎を突き止めるために、市原悦子のように部屋から庭の様子をそっと窺う。
親父が散歩に連れ出して5分。
庭に犯人が現れた!
その犯人は、空からやってきた。
1羽の不気味に黒く光る大きなカラスである。
ステンレス製の餌の器をカチャカチャ鳴らしながら必死で啄ばみ始めた。
犯行を確認してから母親は庭に飛び出して追っ払った。
明くる日。
犬小屋の一番奥に餌の器を仕舞い、板で蓋をし、その上から重りとして石を置いてから散歩に出た母親。
帰ってくると、昨日と同じと思われるカラスが器を犬小屋から引き摺り出し、夢中になって摘まみ食い中。
もはや立ち去る気配すら窺えない。
コラッ!
ダルそうに飛び去ったカラスだが、ふてぶてしくも電線の上に止まって様子を窺う。
さすがにラヴの近くには寄ってこない。
現在、散歩中は餌を家の中に引き上げる初歩的な対策を講じて事無きを得ているが、散歩から返ってくると、カラスは今でも電線上から爪を研いで虎視眈々と狙っている。
基本的に我が家はもうペットを受け入れないつもりである。
里親に名乗り出るなどもってのほか。
そう遠くない将来、ボクが両親の面倒を看ることにもなり、正直、ペットどころではなくなる。
でも、なぜかいるのよ。
ラヴもハナも車道をほっつき歩いていたり、ダンボール箱に捨てられていたころを止む無く救出したわけ。
出会ってしまったものはしょうがない。
だからといって用無しになった犬や猫をボクの家の前に置き去りにしないでいただきたいけれども…。
今から数年前の夕方、愛犬ラヴ・ハナを連れて川沿いを散歩中だった母親は、道路の真ん中で1羽のカラスが何かを突付いたり、咥えて振り回している姿を発見した。
近付いて確認すると、カラスが振り回していたのは掌に乗るほどの「子猫」だった。
カラスを追っ払い、子猫を救出したが、ほとんど虫の息。
追っ払ったカラスは道路沿いのガードレール上から母親の行動を見物している。
折角手にした獲物を奪われて気分を害していたのだろう。
その間ラヴは、カラスに興味を示して跳びかかろうとしていた。
即座に散歩を中止し、家に引き返して大慌てで近くの動物病院に向かった母親。
集中的にヤラれていたのは、目だった。
カラスというのは柔らかい物を好むらしい。
先生は「後は手厚い看護で…」と言うほかなかった。
ミルクやら何やらを購入し、家で看護にあたる。
か細い声で泣き続ける目の見えない生まれたての子猫に対して、してあげられることは、実際の話、ない。
子猫は救われて1日と経たないうち、一瞬だけ痙攣を起こした後、絶命した。
亡き骸は庭に埋められ、猫グッズだけが家に残された。
何の因果か、その数日後、妹の友人が飼っている猫が子を産んだとかで、その内の1匹「
ピータン」を引き取ることになったのである。
ボクの上京時にこんなことが巻き起こっていたなんて全然知りまへんでした。
お利口さんなカラスとはいえ、今もって電線上でラヴの餌を付け狙っているカラスが、あの時のカラス…なんてことはさすがにないか…。
Posted by foe1975818 at 23:59│
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ペット
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弱肉強食の世界とは言え、悲しい話ですなぁ。
ある正社員さん
まさに野生の王国そのものですよ。
カラスはとても賢いですからね。
以前、働いていた会社の駐車場で、上空から車にクルミを投げ落としては、
殻を割って食べているやつもいました。
おかげで、車は凹みましたけど。
それぐらい、ムカつく事もありますね。
>基本的に我が家はもうペットを受け入れないつもりである。
>出会ってしまったものはしょうがない。
すごく、すっごく、すっご〜〜く分かります・*:.。. (ノ´ω`・。)・*:.。.
出会ってしまったから・・。
消えかけている命に出会ってしまったら・・。
子猫は残念でしたが、お母さんのおかげで暖かい家の中で最期を
迎えられたことは、救いだったと思います。
実は去年の暮れから、我が家もやっかいな介護猫を
抱えております。出会ってしまったから仕方ない・・。
また、その内日記に書きたいと思います。
>そう遠くない将来、ボクが両親の面倒を看ることにもなり、正直、ペットどころではなくなる
我が家も、これがホントに最後の最後の猫になると思います〜。
凛さん
クルミを食べたいがために車に落として割るなんて手が込んでますね。
ラッコやないねんから。
ゴミを拾う習性を利用してゴミの分別をするように躾けられたカラスも特集されてました。
茶野さん
最近は出会わないので胸を撫で下ろしてます。
まだ、猫は家で勝手にうろちょろしてるんでいいんですが、犬は散歩に行かないとダメですからしんどいです。
犬が3匹にも膨れ上がった時は大変でしたから。
あの時の猫は残念な最期でした。
きっと親猫も探していたんじゃないかと思います。
犬や猫も歩けなくなってきたり、自力で用を足せなくなってきますし、介護が大変になりますよね。
どこまでしてやれるかはわかりませんが、折角家に来たわけですから精一杯面倒は看てやりたいですね。