昨日はあつかった。
AM9:30にプレイボールがかかった草野球準決勝。
マウンドに超強力助っ人の姿はない。
「夜勤バイト明けで疲労が蓄積しているのでキャンセルを願いたい」との一報が入った。
ロビンソン親子バッテリーで相手に立ち向かうことに。
初回、相手のエラーやフォアボールなどの連発でまともにヒットを1本も打つことなく4点を先制した。
この後、試合は予想外の方向に荒れた。
相手ピッチャーがボークを犯しているのに審判はなぜか「ボーク」を宣告しない。
ピッチャーのモーションの最中に我がチームベンチは「ボーク!ボークやないか!」と抗議する。
これに相手チームがキレた。
「モーションの最中にうるさいんじゃ!」
グローブをグラウンドに叩きつけ、こちらベンチに歩み寄ってきた。
一戦構えようとの意思表示である。
乱闘か!
慌てて制止する審判。
火種は主審にある。
このジジイはずっと前から我がチームにやたらと厳しい。
一体何球ものストライクをボールとジャッジされたか。
他の主審との違いが歴然としていることは、キャッチャーを務めているボクが一番よくわかっている。
ユニフォームも揃えていない我がチームが勝ち上がることが好かんようなのだ。
先だっての「ボーク!ボークやないか!」の抗議はこのジジイに対してのもである。
主審…「抗議する時は監督だけにして!監督以外が抗議したら退場にする!」
我がチームのショートの人…「ボークならボークと抗議するで!」
主審…「ダメ!退場にする!」
監督…「ああ、分かった!!」
この時ボクは、親父の後を継いでマウンドに上がる予定のHさんとサインの打ち合わせをしていた。
「喧嘩は止めましょうよ」
2人はチームを宥める。
「いや、向こうが来たら行くつもりやったで!」
鼻息が荒かったのは熱狂的な中日ドラゴンズファンのOさん。
勝てっこないですって。
相手チームには腕に刺青してる選手とかいたんだから。
おっかねえったらありゃしない。
本当にこっちに向かってきてたら、ボクは大河ドラマ風林火山で千葉真一扮する板垣信方の討ち死にシーンのごとく、バットを振り回していただろう。
で、ドサクサに紛れて逃げてやるのだ。
この辺りが討ち死にした板垣信方と大きく異なる情けないところだ。
試合は同点のまま抽選に。
5-4で我々に凱歌が上がった。
まともな休息を与えられないまま決勝突入。
梅雨が明けた真夏の日差しの中のダブルヘッダーは、おっさんばかりの我がチームにとっては酷。
元気な高校生だってなかなかできまへんで。
決勝は負けて構わないので気は楽やけど。
準決勝でキャッチャーを務めたボクは、センターに回った。
これが今日の最高の見せ場を演出することになる。
親父は疲労が著しいため、マウンドに立つのは監督。
いきなり0アウト2,3塁のピンチ。
3番バッターの打った飛球がボクのところに。
タッチアップで3塁ランナーがスタート切る。
勢いをつけながらキャッチしたボクは、ホームへダイレクト返球。
「アウトーッ!!!」
クゥ〜、カッコよすぎるぜ!
自分に酔い痴れる。
だってね、ちょっとでも横に逸れてたらセーフだったんですよ。
気持ち良すぎて勃起しそうだ。
監督が後続を起ち、基、経ち、この回を無失点で切り抜けた。
ベンチに帰ると賞賛の嵐。
「もう一回やれと言われても無理ですよ」などといい気になる。
そんな調子に乗りすぎるボクに、神様は容赦なく制裁を加えた。
次の回。
相手チームのバッターがボクのところにゴロでヒットを放った。
ランナーもいないことからボクは焦ることなくボールを処理するはずが、イレギュラー。
「うっ!」
小さな唸り声を上げてボールをキャッチした。
イレギュラーしたボールがボクのゴールデンボールに命中したのだ!
何事もなかったように内野にボールを返す。
チームメイトは股間に命中したことを知らないし、さっきかっこいいところを見せたばっかりなのに知られたくない。
猛暑によって滴る汗に、脂汗が混入。
2つの汗は交わることなく全身を覆い尽くし、痛みは秒単位で増していく。
痛みというよりも熱さと言ったほうが的確か。
ドラゴンボールが7つ集まり、シェンロンが現れたなら、
「頼む!この回だけはオラのところにボールは飛んでこないでくれ!」
そう願うだろう。
今、飛んできたら、内股のオカマちゃん走りでボールを追う羽目になるのだ。
使い物にならなくなったらどうしよう。
まだまだ一部の人に珍重される代物なのに(形は歪だけど)。
このまま痛み(熱さ)が引かなければ、草野球界からプリティリーグ界への転身を考えちゃうわよ!
祈りは通じ、色んな意味でピンチを切り抜けた。
ボクのバットが奮わなかったのは、下半身のバットが痺れていたせいだ、きっと。
決勝は1-7で涙を飲み、準優勝で大会を終えた。
股間の痛み(熱さ)は引いた。
振り返る。
ボールがゴールデンボールに命中したのは、ボクのゴールデンボールを含むその一味が巨大だったからなのではないか!?
もし小さければ後逸していたかもしれない。
でかいと何かと便利だぜ。
神様よ。
再び浮かれるボクに制裁を加えてみろよ。
うひゃひゃひゃひゃ
そして馬券がハズレたのである。