ガチンコラーメン道1で優勝した土井氏が渋谷に「道」という名のラーメン店を構えたとの情報を入手し、北海道ツーリング前に偶さか府中の我が家に寄っていたピサロと共に一路目指した。
今から6,7年前に遡る話である。
土井の店の暖簾を潜る。
たじろいだ。
客がおらず、水を打ったようにシ〜ンとしている。
時刻は午後7時。
土井の店の場所は決して人通りは多くないが、少し先に軒を構える別のラーメン屋は非常に賑わっていたのだが。
着席すると、カウンター越しに耳慣れた声が。
「すんませ〜ん。食券買ってくださ〜い。」
声の主は、土井だった。
「客おらんねんから口頭で注文とれよ!」
我々は喉まで出掛かったが、店のルールだから渋々従うことにした。
食券機の前に立ってメニューを確認すると、
「ガチンコラーメン」「ガチンコチャーシューメン」
など、ガチンコのオンパレード。
ベタに「ガチンコラーメン」の食券を購入(700円ぐらいだった)。
品が運ばれてくる間に店内を見回す。
「いらっしゃい!」「また来てや!」「おおきに!」とサインペンで書かれた色紙が壁のあちこちに貼り付けられている。
文化祭やないねんから。
また、販売用の「ガチンコTシャツ」も壁に貼り付けられ(異様に値が張った)、ガチンコ頼みと言わざるを得ない状況だ。
実はここに辿り着くまでに迷ってしまい、帰り道がわからなくなっていた。
交番で「ラーメン屋の『道』ってこの辺にあります?」と尋ねたが、警官2人は「『道?』聞いたこともない」と首を傾げ、警察で見た地図にも載っていなかったし、情報を提供してくれた友人も詳しい場所を把握していなかった。
我々は右往左往しながらやっとの思いで辿り着いたのである。
交番からそんなに距離は要さなかったんだが。
見た目80点(ロビンソン採点)のおねえちゃん店員に最寄駅を尋ねようとしたら、ねえちゃんはメールに夢中だった。
コラコラ!
いくら暇やからって、それはいかんだろ。
構うことなくピサロが道を尋ねると、
「あっちです。」
と我々に振り向くことなく、指を差して終わる。
おいおい!教える気ゼロじゃねえか!
短気なピサロが丁寧に食い下がる。
「えっ?店出てどっち?左?」
「左です。」
愛想もクソもない。
でも、そのおねえちゃんの指摘は的を射ており、店を出て大きな道を只管左に進めば渋谷駅に到達できた。
愛想のないねえちゃんによってラーメンが運ばれてきた。
わざわざねえちゃんに運ばせなくとも、土井がカウンター越しに我々に手渡した方が早いのに…。
真っ白いスープのとんこつラーメン。
ねぎが沢山入っているのがいいじゃないか。
夏のクソ暑い時期に道に迷い、著しく空腹状態の我々。
これでクソ不味かったら許さない。
…
ガチンコTシャツなどの不必要な商品を手にするなどの無駄な動きを取ることなく、我々は店を出て口を揃えた。
「もうないな」と。
40点(ピサロ採点)の店はまだ存在しているのだろうか?
それとももう店は取り壊され、土井氏は人生という名の「道」に迷ってしまっているのだろうか?
どちらにしろ、もうどうでもよい話だが。