November 20, 2007

記録

車掌業で最も心神耗弱するのは、駅や踏み切りなどで飛び込み自殺を計られた場合である。

運転士は飛び込んだ人間を発見すると、当然、急ブレーキを掛けるが、車ほど急には止まれないので確実に轢き殺してしまう。
急ブレーキの原因を車掌と本部に無線で伝え、車掌は車内にアナウンスで説明する。
次に運転士、車掌共に電車を降りて、事故現場に急行する。
だが、電鉄会社は「ダイヤ」を商品としているため、長い間電車を停車させておくわけにはいかない。
従って運転士は運転席に舞い戻って、さっさと運転を再開させる。
代わりの車掌は次の駅あたりで補充すできるので、車掌は事故現場に留まり、警察が来るまで現場保存に努める。
例えば踏み切り付近などでは、野良犬やカラスが死体を突付きにきよるのを阻止しなければならないし、運転士が急ブレーキを掛けたことを証明してくれる人も探さなければならない。
あとは、死体から飛び散った肉片を回収したりもする。
最悪の役回りである。
運転士は運転士で、業務後に警察から事情聴取を受ける破目になる。
「これでお前も前科持ちやな。」と同僚から軽口を叩かれたりもするが、当の本人は暫く食が進まないほどに落ち込んだりする。

長い間乗務していると、一度ぐらいはそんな場面に遭遇する。
寧ろ、遭遇しない方が稀だ。

駅で働いていた頃、その珍しい人と仕事をした。
その当時は駅で働いていたOさんは、車掌業を勤めた20数年間もの間、小さなハプニングに一度たりとも出くわさなかったというのだ。
おそらくこれはこの会社に於ける記録だろうと自負している。
車掌業残り僅かとなった数週間は、記録を達成できるかどうかドキドキして、間違った車内アナウンスをしまくりだったそうだ。


余談だが、ボクはこの夏、一度もゴキブリに遭遇しなかった。
こんなの初めて。

Posted by foe1975818 at 23:42│Comments(6)TrackBack(0) 過去ロビ 

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この記事へのコメント
こんばんは。
運転士の話、居酒屋の店員が便所の汚物に出くわし、処理せざるをえないケースに陥るようなものですかね?ん〜、例えが汚くてすみません。。
出来れば仕事で人の不幸とは対面したくないものです。
Posted by テラ at November 20, 2007 23:50
私、初めて自分の部屋で遭遇したとき
腹の底から絶叫しました。
しばらくは呆然として、当分の間、
そこから出てくるんじゃないかとおびえていました。

その車掌さんの電車にむしろ乗りたい。
Posted by すい at November 21, 2007 00:29
凄くお詳しいですね。全くそのとおりで、車掌の仕事は人身事故が1番嫌なんですよね・・・
どんな列車も法律上非常ブレーキをかけてから600メートル以内に停止出きる構造にはなっているのですが、人身事故に遭遇するとまず間違いなく電車は事故現場を通過してしまい、停止した時には事故現場は数百メートル後方
になってしまいます。
となると必然的に1番最初に現場に駆けつけるのは車掌になんですよね。
僕の同僚も2ヶ月前、首と胴体が真っ二つに分かれた死体と5分間も二人だけでいたそうです。
ブログでは仕事の話は全く書いてませんでしたが、一応某鉄道会社で車掌をやっています。
給料も安いし全く割りに合わない仕事ですよ本当に。
ちなみに僕はまだ1度も人身事故には当たってません。いつ当たるかドキドキもんです。
Posted by serins at November 21, 2007 18:57
俺は今年の夏は2日に1回くらい見てました、ゴキ。来年はロビ家みたいな対策しようかな、と。

何でしたっけゴキ退治の薬品の名前
Posted by ある正社員 at November 22, 2007 12:20
テラさん
他人のゲロやうんこは自分のもので見慣れてますが、死体となるとなかなかお目にかかれませんから焼きついて離れないでしょうね。



すいさん
貴重と言うべきか、災難と言うべきか。
お察しします。
って、自分の部屋で遭遇したって死体じゃないよね?
Posted by よしゆきロビンソン at November 22, 2007 21:45
serinsさんは車掌でしたか。
オレも一瞬だけ車掌をやってました。
勿論、あんな凄惨な現場に居合わす前に辞めましたけどね。
真面目な話、自殺者には死ぬ場所を選んでほしいですよ。
駅にいたときも幾度となく人身事故で電車が遅れ、客に文句を言われましたし。
自殺したヤツに文句を言えよって話ですわ。
車掌は給料が安いですが、運転士になればグッと上がりますからね。
頑張ってください。



ある正社員さん
バポナです。
ただ、外気に触れないようなところに貼り付けないと健康被害が出るので注意が必要です。
実は、この夏はバポナをはりつけてなかったのに出ませんでした。
Posted by よしゆきロビンソン at November 22, 2007 21:53