July 22, 2006

同期の桜

ボクは以前、ヒョンなことから元騎手の細江純子さんのお話を訊く機会を得た。
なかなかに興味深いエピソードばかりだった。

サイレンススズカという日本競馬史上最高の馬がいた。
気性が荒く、スピードがありすぎるために自分をコントロールできず、デビューから騎乗していた上村騎手は馬に持っていかれて、必ずしも満足な成績を得ることができなかった。
その様子を他の馬に乗りながら武豊騎手は、「自分なら抑えれる(持っていかれない)。」と自信を持っていたそうだ。
そしてサイレンススズカが香港に遠征した時、遂に武豊騎手が騎乗することになった。
スタートして一歩目を踏み出した瞬間、武豊騎手は悟った。
「抑えれない」と。
それほどまでにサイレンススズカのスタートダッシュのパワーが強烈だったのだ。
このレースで逃げ戦法に出たサイレンススズカと武豊騎手は敗戦となったが、この馬の最良の脚質はやっぱり「逃げ」であることを確認し(実際は『逃げ』というより自由に走ってるだけだが)、その後は余裕の連戦連勝を重ね、日本競馬史上最高のサラブレッドと言われるようになったのだ。

武豊騎手とはこんなエピソードもあるという。
細江騎手は逃げなければ持ち味を発揮できない馬に騎乗することになり、1番枠が当たった。
すぐ隣の枠には武豊騎手。
スタート直前の輪乗りのときに、細江騎手は武豊騎手にお願いしたそうだ。
「豊さん。わたしが通るインコース1頭分を開けておいて下さい。お願いしますぅ。」
「わかった。開けとく。」
武豊は何もかもが完璧な騎乗をするが、特にスタートが滅法上手い。
よって、スタートして武豊がインコースによってスペースを埋めれば、逃げなければ持ち味を発揮できない馬に騎乗している細江騎手は前を塞がれてレースにならない。
1番枠は最短距離を走れるが、スタートを失敗すれば致命傷になりかねないだけに、予めお願いしたのである。

スタートした。
細江騎手は抜群のスタートを切り、先頭に立とうと手綱を必死にしごく。
しかし、武豊騎手は既に前を走っていた。丁寧に1頭分を開けて。
必死に追う細江騎手。
200mほど行ったところで、細江騎手が一向に来ないので、武豊騎手は後ろを振り返り、
「もう、いいやろ?」てな感じの笑みをこぼし、開けていた1頭分のスペースをスーっと埋めていったそうだ。
「お願いする以前の問題でした…。」
細江騎手は、少し恥ずかしそうに語った。

また、騎手というのは最初に所属する厩舎で将来が決まってしまうこともあると語った。
新人騎手を育てようと、レースに積極的に乗せて経験を積ませる厩舎と、そうでない厩舎は現にある。
この問題に関して細江騎手は、それ以上多くは語らなかった。


どんな世界でも肝は「環境」なのだな。  

Posted by foe1975818 at 07:07Comments(6)TrackBack(0)