July 16, 2006

温度差

ボクは車に関してほとんど興味はない。
色や型などどうでもよい。
小回りが利いて、お求め安い値段であればそれで充分満足なのだ。
それと、ワイパーのゴムがすぐ取れないとか、4枚ドアであることと、そうだそうだ座席を倒したらベッド代わりになるくらいの広さは欲しい。
なんといってもすぐにブっ潰れない丈夫さが一番だな(前の車を廃車にしたくせに)。
要は、車にお金をかけるくらいなら、無駄に競馬へつぎ込むのである。

知識も希薄だ。
ある日、新御堂筋で「普通に」車線変更したら、あおられた。
ムカついたので、いきなりセカンドやローにして抵抗していたが、なかなかオカマを掘ってくれない。
どうやら後ろの車はベンツだったらしい。

ハンドルの向こうにある「HとC」のメーターの意味も全く存じ上げていなかった。
友人ヒロキジーニョによれば、あのメーターは全くの冷やかしで、かなりアバウトだと言う。
無知なボクは、もちろん初耳だった。

ヒロキジーニョは先日の泥酔事件の数時間前、きちっとした水温計を車屋で装着してもらった。
4万円のお買い上げである。
「高っ!」
ボクが呟くと、
「車が故障する前に知らせてくれるんや。4万円は安い!」
ヒロキジーニョは熱弁を振るう。

安いとみた彼はボクとは真逆で、今、愛車インプレッサに尋常ならざる愛情を注いでいる。
溺愛だ。
ボクにとってどうでもええような微々たる異変にも敏感に反応し、そんな一大事ならば大慌てでディーラーへ駆け込む。
自称走り屋でもある彼は、少しでも理に適わない運転をしている人間を発見すると100%あおる。
「自分がどれだけ危ない運転をしたかを身をもって教えてやる。」とは彼の言い分だ。
自他共に運転が上手いと認める。
だが、危険と一歩隣り合わせの走りに、ボクが肝を冷やした回数は数え切れない。
今の彼からインプレッサを排除すれば、もはやネプチューン名倉似の顔しか残らないかもしれない。

車屋で水温計を装着し終わると、超ご機嫌のヒロキジーニョ。
しかし、超ご機嫌フェイスが不安フェイスへとみるみるうちに変貌していき、体温が急降下したのではないかと心配してしまうほどに顔が青ざめている。
フランス戦でフリーキックを外したときのロナウジーニョの比ではない。
原因は装着したばかりの水温計。
0〜120度の幅があるわけだが、90度を示している。

ヒ…「よしゆき。ちょっとこれ温度高すぎひんか?」
よ…「そんなことないやろ。針が振り切ってたらヤバイかもしれんけど。アバウトな方の水温計は真ん中やから大丈夫やろ。」
ヒ…「でもいきなり90度やで。大体5,60度ぐらいかと思ってたんやけど。」
よ…「この気温やし、車もホットになってるからそれぐらいいくやろ!」
ヒ…「でも、水が90度っておかしいやん。お湯やん。お湯やったら周りを冷やされへんやん!150km/h出したらどんなけ上昇すんねん!」
よ…「パッと見90度は熱いけど、周りが500度やったら90度なんか水同然やろ!絶対値ではなく相対値の考えでいけよ!!」
ボクはどうでもよかった。
だからヤケクソの理論を告げたのだ。
ところが、
ヒ…「おい、よしゆき、それ、ナイスな、理論。」
ヒロキジーニョは韻こそ踏んでいないが、ヒップホップ系のノリで思いのほか納得した。

でも鎮火したと思われた心配の火は即座に再燃。
ヒ…「でもなあ…。さっきの車屋のおっさんが最後の最後に見直すの忘れてるかもしれへんしなあ。あっ、修理も2時間で終わるって言ってたのに2時間半かかったということはヘマしてるかもしれん。頼りなさそうなおっさんやったし。」
よ…「じゃあ、今から戻ってもう一回見てもらえや!」
ヒ…「そんなんカッコ悪いやんけ!ましてや向こうの非を探ろうとしてるのが見え見えで申し訳ないし、もし90度が正常やったらめっちゃ笑われるやんけ!!」

ブラックマヨネーズの漫才みたいになっている。
程度の違いは歴然としているが…。

ヒロキジーニョとボクの車に対する温度差は、水温計の針が振り切れるほどに激しい。

結局ヒロキジーニョは、以前に水温計を装着した別の友人に連絡をとり、90度が普通であることを確認。
その後、超ご機嫌で居酒屋へと向かい、若女将に対して熱の針が完全に振り切ったのである。  

Posted by foe1975818 at 13:29Comments(14)TrackBack(0)