March 11, 2008

傍聴機関車

先週木曜日、久方振りに裁判傍聴目的で、大阪高等・地方裁判所を訪れた。
偶然、羽賀研二こと當真(とうま)美喜男被告の被告人質問が地裁で10時〜17時もの長時間に亘って開廷されていたのだが、整理券なしでは入廷できないので仕方なく諦め、他の裁判メニューからヤクザが首を突っ込んでいなさそうな安全、且つ穏やかな雰囲気を醸し出している案件を3つ選択した。
その中で最もディープであると判断した案件を今日は綴る。

事件の概要
深夜、大阪市城東区のバーでビールをコップ1杯飲んで店を出たKは、帰宅すると同性相手のI.Yが姿を消していることで動揺し、原付で警察に向かった(この時点で飲酒運転だ)。
同性相手の捜索を嘆願するためである。
その道中でタクシーと接触事故を起こしたKは走って逃走。
タクシー運転手は走って後を追う。
家に逃げ込んだKは玄関扉を施錠し、篭城。
騒ぎで駆けつけた警官らが扉を開けるよう説得すると、Kは麦焼酎「神の河」のボトルをストレートでガブ飲みするや、空いたボトル、自宅の衣装ケース、洗濯機などを玄関扉に投げつけ、衣類に火を点け抗戦。
篭城開始から2時間20分後の午前4:20。
警察がチェーンソーで扉を強引に扉を破壊して開けると、包丁を手にしていたKを確保し、逮捕した。

そんなところである。
TVでも報じられていたので記憶の片隅に留めている方もいらっしゃるかもしれない。
この日は「放火」についての2回目の審理のようだ(実際は「建物なんちゃら放火」というややこしい罪名だ)。
ネットニュースにはKは「自称無職」とあったが、実際は建築関係の仕事に就いているようで、社会復帰した際にもそちら方面への再就職を希望している。
参考として、被告人Kの声や喋り方は吉本芸人「中山功太」似で、かなりハキハキと発言する。
髪型はドリフターズ加入直後の「志村けん」のようなボサボサ頭。
上下ジャージ姿。

以下、Kの主張
・接触事故を起こした事実は覚えている。
・逃げたのは、タクシー運転手が追いかけてきたからである。
・家に逃げ込んだとき、何者かが扉を叩いているのは理解しているが、それがタクシー運転手なのか、警察官なのか、アパート1階の住人なのか、はたまた仕事場の人間なのかまでは判別できなかった。
・アパート1階の住人とはトラブルが絶えなかったし、仕事場の人間にはしょっちゅう「殺すぞ」と言われていた。
・ただ、なんでそんなに自分を表に出そうと躍起になっているのかは分からなかった。
・寧ろ早く去ってほしかったし、包丁を手にしたのは殺されるかもしれないと察知したからであり、殺されるぐらいなら一戦も辞さない覚悟だったからである。
・火をつけたこと、及び火が上がっていることは覚えてないが、今考えると自分しかつける人間はいないと思う。

検察からの「玄関扉に投げつけた衣装ケースはどれくらいの大きさですか?」の質問に対し、Kは身振り手振りで大きさを示していた。
裁判長が「その証言台ぐらいの大きさですね?」と合いの手を入れたが、「違います」と断固反論し、改めて身振り手振りで大きさを示したが、どう見ても証言台と同じ大きさだった。

検察…あなたが部屋にいる時、扉の外側の人から何と言われましたか?
K…「K君、飴玉をあげるから出ておいで。」って言われたんですけど、「この人ら、ホンマにくれるんかな?」って思いましたね。

検察…「あなたは供述調書で、扉の外側の人間に対し『眠いから帰れ!』ではなく、『眠たいので帰ってください』と訂正させたり、『火つけるぞ!」』ではなく、『火つけるぞ!』と訂正させたのは何故ですか?
K…兎に角、話し相手が欲しかったんですよ。それでH刑事と喋っているうちに自分の中で作り話が出来上がって、そっちの表現の方が都合が良かったんですよ。

また、Kは酒を飲むと20回に1回は記憶を失い、50回に1回はもっとハイレベルな記憶喪失に陥るアルコール中毒患者で、事件当日のことは断片的にしか覚えていないことと、躁鬱だと自分で主張しており、弁護人も精神鑑定を要求している。
次回はKの母親が弁護側の証人として情状酌量を狙いにくる。

当事者ではない友人Yとボクのここまでの見解は、敢えて記さないでおく(まあ、大体想像つくかと思いますが)。

友人Yはこの日が傍聴デビューですっかりハマり、この裁判の行方を見守りたいと強く願い、次回はいつだ?と目を輝かせていた。
その次回審理日として4/17を裁判長が提案すると、弁護人が「その日は午前午後とも神戸です。」と返答したため、4/14の16時からで落ち着いた。
「待て!」
その日は友人Yもボクも仕事ではないか!
法定中に響き渡る声量で「意義有り」と唱えたかったが、認められるわけないし退廷を命じられても恥ずかしいので、ボクらの代わりにこの裁判の行方を誰か知らせてください。
因みに次回審理日を相談中、Kは「4月上旬に建築の資格の試験があるんですけど」と弁護士に対して懇願していたが、軽く無視されていた。

また特筆すべき点は、ヒールの高いブーツを履いていた書記官の女性がエビちゃんを彷彿とさせ、色気ムンムン。
完全にボクを虜にした。
「君を裁き、『美女罪』を言い渡して、ボクの家に閉じ込めるのは難しいことではないんだよ。」などと、御用となったどこぞの高校の校長のような脅迫は一瞬たりとも浮かばなかったことを付け加えて、日記を結審する。  

Posted by foe1975818 at 22:11

July 02, 2007

借り

先週日曜日に雨で順延となった草野球公式トーナメント戦が昨日無事に行われた。

我がレンジャースの監督は、息子をこの日限りの助っ人として加入させた。
息子は某大学2年のバリバリの現役野球選手。
なぜ監督はここまで鬼気迫る形相で勝ちに拘っているのかと言えば、トーナメントの参加費用に要因がある。
参加料で13000円払っている。
1回戦で負けようが、決勝まで勝ち上がろうが13000円。
費用を無駄にしないためにも、せめて初戦を飾りたいというのが監督の考えだ。
それはどのチームにも言えることだが、ユニフォームも作製できない貧乏野球部だけにその思いはどのチームよりも強い。
貧乏の証拠として、うちのチームだけ早朝草野球における特例措置として、練習着で試合に臨むことを認めてもらっている。
しかも皆バラバラだ。

助っ人がキャッチャーを務めることになり、ボクはショートに就いた。
公式戦でショートを務めるなんて、小学校のソフトボール以来20年ぶり。
結果的にこのコンバートが試合の行方を大きく左右することになる。

レンジャーズは1回表にあっさり先制し、さらにチャンスが膨らんだが、後続が絶たれ1点止まり。
相手投手はフォームがゆったりしているわりにボールが打者の手元でピュッと伸びており、しかもコントロール抜群。
苦戦は免れないと悟った。

その裏。
タイムリーで同点に追いついかれたレンジャース。
尚も2アウト2,3塁のピンチ。
バッターの放った何でもないショートゴロが、ボクのところに転がってきた。
しかし、これをボクが弾いてしまい、逆転を許した。

なんとしても挽回したいボクに2回表に打順が巡ってきたが、一度もスイングすることなく敢え無く3球三振。

この後、試合は膠着状態に。
キャッチャーに入った助っ人の本職はキャッチャーではないようだが、このレベルではどの守備位置でも我々の実力を大きく上回る。
盗塁は二度刺した。
エラーを犯しているボクが、助っ人のボールをどれだけしっかりとキャッチしてランナーにタッチしたことか…。
その時、ランナーのスライディングを太股に食らい、筋肉痛を発症している。

あっという間に迎えた最終回。
依然として1-2でレンジャースは1点リードを許している。
そうだ、ボクが犯したエラーのせいで。
祈るような思いでバッターを見つめていた。
祈りが通じ、2番の助っ人がレフトオーバーの2塁打で出塁。
3番がショートゴロに倒れるも、4番の主砲Hさんがレフト線に2塁打を放つ。
ベンチは大盛り上がり。
スコアは2-2のふりだしに戻った。

2アウト2塁で6番のMさん。
Mさんが出塁すれば、ボクに打席が回ってくる。
同点に追いついてもらったからといって、ボクのエラーが帳消しになるわけではない。
「頼む!回してくれ!」
その初球。
Mさんの脇を掠めた。
デッドボール。
「よし!」

お膳立てをしてくれたMさんに感謝した。
(試合後、聞いたところによると、Mさんはデッドボールではなかったらしく、ボクに汚名返上のチャンスを与えるために達川バリの演技をしたのである)
これを意気に感じない男はもはや男の隅にも置けず、さっさとチンコバットを圧し折るべきだ。

まず初球。
見逃してストライク。
2球目。
ファウル。
3球目。
アウトコースのボール。
さあ勝負球の4球目。
アウトコースの球だ。
追い込まれている以上、振らないわけにはいかない。
ボクはカットを試みた。
「ブーン!!」
バットは空を切った。
ありゃりゃ
チンコバット切断か!?
いやん、まだ使えるわよ。
若干腐食してるけど。

レンジャースの勝ちは潰えた。
もう、その裏の守備で0点に抑え、抽選に持ち込まなければならない。
だが、レンジャースは抽選に滅法弱い。
ボクが初めて参加したトーナメント戦も抽選で負けている。
因みに抽選勝ちした相手は優勝した。

3者凡退に抑え、やっとこさで抽選に持ち込んだ。
両チームのメンバー9人がそれぞれ籤を引く。

籤開封。
高校の合格発表よりも、初セックスよりも、大学の合格発表よりも、こんなにドキドキしたことはない。

結果は5-4でボクらの勝利だ!
レンジャースも籤に弱いが、相手チームは輪を掛けて籤に弱いらしい。

ボクが犯したミスのせいで、危うく初戦敗退を喫し、体から煙が上がるほどの監督の意気込みを自らの手で潰すところだった。
羽賀研二における暴力団と同じく、草野球とエラーは切っても切れない関係である。
但し、ボクは野球経験者である以上、自分のエラーだけは許されない。
ましてやそれが決勝点に繋がるミスならば尚更だ。


中学の準硬式野球部時代。
センターの守備に就いていたボク。
1アウト2塁で、バッターがセンターライナーを放った。
2塁ランナーが飛び出していることを確認したボクは、捕球してすぐさま2塁へ送球し、ダブルプレーを完成させるシナリオを描いた。
実はその前の回でも全く同じ状況が起こり、2塁ランナーを刺してピンチの芽を摘んでいた。
「ラッキー!」
そんな油断が生まれたのか、捕球の瞬間、ボールはグローブを掠め、後方に転々。
ランナーに気をとられ、肝心のボールへの注意が疎かになっていたのだ。
このプレーによる失点が命取りとなり、我が箕面一中野球部は箕面六中に敗退した。

死ぬまで忘れることのできない苦い思い出だ。


チームが勝てて、本当によかった。
試合後、観客席で差し入れのビールと寿司を食らいながら祝杯を上げたが、心底喜べない自分がいた。
この借りは再来週の2回戦で必ず返す。
チンコバットの切断はそれからでも遅くはない…ことにしておいてくれ。

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Posted by foe1975818 at 23:39Comments(4)TrackBack(0)